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2023.10.25

【命を救え】骨が折れたハムスターを緊急手術した結果… Vol.71


水野:こんにちは。
WOLVES HAND、調布動物医療センターの水野です。
よろしくお願いします。

スタッフ:前回に引き続き、後ろ脚の骨が折れてしまったハムスターの手術の様子を伺いたいと思います。


水野:はい。
右後ろ脚の骨折です。
実際の手術を見ていきます。


スタッフ:骨が浮き出ているとおっしゃっていましたね。

水野:そうですね。
こちらが、実際に骨が浮き出ていたところです。


水野:血が出ています。
これは皮膚や筋肉を切って出た血ではなく、骨が筋肉に突き刺さって出ていた血ですね。
勝手に出てきてしまっています。
皮膚が骨によって裂けてしまっている状況です。

骨が完全に折れてしまっているので、膝側の骨と足首側の骨がぶらぶらの状態です。
まずはその骨を、皮膚筋肉を切って出していきます。


水野:ハムスターの骨は細いです。
この子の骨がだいたい1~2mmくらいの太さです。
そのため、難しい手術になります。


水野:人間やイヌ・ネコなどの大きい動物であれば、金属のプレートを使ったり、ボルトで骨を固定したりできます。
安静にできる人間であれば、ギブスで治療するかもしれません。
しかし、ハムスターの場合は、骨が細いため、プレートを当ててねじで固定することができません。

そこで、骨の中にピンを入れて、固定する方法を取ります。
これを「髄内ピン」と呼びます。


スタッフ:元々の骨が細いですが、それよりも細いピンを入れるのですよね?

水野:そうです。
この子の骨の場合、0.6mmの太さのピンを入れています。
しかし、最初から0.6mmのピンが入るわけではありません。

ピンを入れるために、0.3mmのドリルから開始します。
穴を少し広げる作業で、0.6mmまで広げてから、ピンを入れていきます。

水野:折れている箇所から、一旦ピンを膝の方に抜いて、そこから足首の方に刺しなおします。
スタッフ:それが一般的なやり方でしょうか?

水野:小型の動物では、おそらく一般的かと思います。
イヌやネコのサイズになると、膝側から直接入れるのが一般的かと思います。

スタッフ:小さいが故に、様々な手技があるのですね。

水野:そうですね。
小さいので、なかなか膝側から骨の中を目指すのは難しいです。
そのため、折れたところから入れることになります。

折れているところからピンを入れて、膝に抜いている状態です。


水野:手術が終わって、皮膚を縫い終わった状態です。
糸は、かなり細い溶けるものです。


水野:これが、手術後すぐの状態です。
問題なく麻酔からは覚めていますが、術後のため、足はまだ全然使えていません。

スタッフ:無事に目が覚めて良かったですね。

水野:そうですね。


スタッフ:足の角度も、普通の角度になっているということですよね。

水野:そうですね。
元通りの角度になっていて、まっすぐ骨がくっついていると思います。


水野:イヌやネコなどの大きい動物だと、基本的には金属のプレートとねじを使用して、手術をするとお話ししました。
しかし、それはハムスターだとなかなか難しいです。
骨の中にピンを入れるだけだと、骨の固定は出来ます。

しかし、骨がねじれたりする方向の力には、ピンは耐えられないです。
そのため、同時にギブスのようなものを使用して、骨が回転しないようにすることがあります。

この子もすごく活発で、手術後もすぐに走り回る子でした。
そのためすぐにギブスを装着しました。

スタッフ:そのギブスを噛んでしまったりはしなかったのですか?

水野:基本的には噛んでしまうこともあります。
その場合、エリザベスカラーで管理をしたり、外れかけたら付けなおしたりすることが必要になります。


スタッフ:無事に手術成功ということですね!

水野:そうですね!