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2022.06.15

息が苦しい…命に関わる犬の呼吸の病気 Vol.37

息が苦しい…命に関わる犬の呼吸の病気
犬がゼーゼーしたら病院へ急げ!
犬の気管虚脱を解説します。

獣医師・山下:では早速見ていきましょう。音を聞いてほしいです。

スタッフ:息がちょっと荒いですね。ゼイゼイ言っています。

山下:これはまさにゼイゼイですよね。

スタッフ:目も白くて、結構高齢なわんちゃんですか?

山下:そうですね。非常にいいポイントですね。

山下:高齢犬で少し体格の良い子、ぽっちゃり型の子によく見られる症状なんです。この子は「普段お家にいるときは全く音はしない、呼吸の音はしない」と飼い主さんが言っています。

山下:病院に来ると極度の緊張で……特に柴犬ちゃんなので。柴ちゃんというのは非常にデリケートな性格なので、病院に来るとだいぶ興奮します。

山下:興奮によって呼吸の音が、ゼイゼイゼイゼイ言ってしまうんですよ。お外で遊んだ時とか、多少わんちゃんと接触があって興奮した時にも呼吸がゼイゼイする時がありますとのことです。

スタッフ:喉が渇いているわけではないのですか?

山下:喉が渇いているわけではなく、実は「気管虚脱」という症状です。

スタッフ:気管虚脱?

山下:はい。あまり聞きなれない言葉かもしれないです。健康診断では、一緒にレントゲン写真を撮れる健康診断プランがあります。この子も健康診断で4月に来てくれた際に、そのプランにしてみますかという風にお話ししてみたところ、「じゃあ喉が気になるので撮影してください」とレントゲン写真も健康診断で撮る事にしました。

山下:これがレントゲン写真です。首から胸にかけてレントゲンを撮りました。

山下:この太く黒く抜けているところが全部気管です。

スタッフ:ここに食べ物が入るんですか?

山下:そうなんです。誤嚥(ごえん)と呼ばれる時には、ここに物が入ってしまいます。食道ではなく気管の方に食べ物が詰まってしまうことを、誤嚥と言います。

山下:誤嚥によって、肺の方にばい菌や食べ物などが入り込んでしまう事により、肺炎が起きます。そういう時もゼイゼイとした呼吸になることもあります。

山下:気管は空気が入ると黒く抜けます。なので、他の白いところに比べてここだけ黒いのがわかりますか?

スタッフ:はい、分かります。

山下:これが呼吸によって変化する病気、それを気管虚脱と言います。吸った時と吐いた時で、この気管の太さがなんと変わってしまうんです。このレントゲン写真は吸った時です。

山下:もう一枚、息を吐いた時のレントゲン写真も撮りました。

スタッフ:めちゃくちゃ細くなってます。

山下:分かります?

山下:もうこの矢印で示したあたりに関しては、ペシャンコですよね。特に重度の気管虚脱のレントゲン写真です。「吸気」(吸った時)と呼気(吐いた時)のレントゲン写真を一枚ずつ撮る事によって、期間の太さがなんと変わってしまっていることがわかります。

山下:気管というのは元々、軟骨と膜でできています。こういうU字の軟骨があって、その上に「膜性壁(まくせいへき)」といってペコペコできる膜があります。

山下:気管は軟骨でできているので、径は変わらないはずなんですよ。それがだんだん高齢になることによって、軟骨が少し弱くなります。膝や関節の軟骨が弱くなってくることと同じです。

山下:軟骨が弱くなる事によって気管の太さがホースを潰したような状態になってしまって、ここ(U字の隙間部分)にある膜性壁という膜が垂れ下がってきてしまうんですね。それによって症状が出てきます。要するに息が苦しい。

スタッフ:本当に見た目じゃわからなくて、音で判断してあげるという事ですか?

山下:そうですね。まずあの明らかに異常なゼイゼイした呼吸をしていることと、もう一つ。

山下:健康診断の時に必ず触診をしますけど、鼻の先から尻尾の先までくまなく触っていきます。喉が良くなっている子は喉を少し押すだけでもペコペコしてしまって、それによって咳が出たりなどの違和感が出ると言われています。なので、触診でも実は見つけることができます。

スタッフ:どんな治療ができるんですか?

山下:軟骨が弱くなっている状態なので、軟骨を強くするお注射を打ってあげるですとか、サプリメントで軟骨を強化する。そういった治療を継続的にさせていただくことが多いです。