血液透析器の導入

血液透析器の導入

 当院では血液透析器を導入いたしました。急性腎障害を起こすレプトスピラ症やぶどう中毒、ユリ中毒では乏尿や無尿状態になってしまうと亡くなってしまうことがほとんどでしたが、腎臓の機能が回復するまで血液透析を行うことにより、回復する可能性がかなりあがります。

血液透析とは

 血液透析では、動物から血液を外に出し、その血液をダイアライザという装置で綺麗にし、その血液を体に戻すという作業を行います。
 そのため、様々な病気で腎臓の機能が低下している際に腎臓の代わりに体の中の毒素を取り除くことができます。
 

人と動物の違い

 人では主に「慢性腎臓病」で使用され、定期的に血液透析を行います。
 動物の場合は人のように簡単に血管にアクセスすることができないため、慢性腎臓病の末期の治療にはほとんど利用されていません。動物の場合は急性に腎臓の機能が低下している「急性腎障害」や「中毒性物質」を食べてしまった場合などに用いられます。

血液透析の適応症例

急性腎障害

<レプトスピラ症>

 沖縄では多く見られる感染症で、急性腎障害や肝炎を起こし、死亡率の高い病気です。急性に腎障害を起こし、無尿状態になったり、血液中のカリウムという数値が上がり、心停止を起こすことがあります。亡くなってしまうことの多い病気ですが、血液透析を行うことにより生存率がかなり上がります。

<ぶどう中毒>

 犬はぶどうを食べることにより、急性腎障害を起こします。血液透析で腎機能が回復してくるまでの腎機能の代わりを行うことができます。

<ユリ中毒>

 猫はユリをなめたり、食べたりすることで急性腎障害になります。乏尿、無尿といった尿があまり作られない状態になった場合は血液透析が必要であり、そのような状態では血液透析でしか助けることができません。

<原因不明の急性腎障害>

 急性腎障害ではすべての原因がわかるわけではなく、原因不明の場合も多々あります。時間とともに機能が回復してくる急性腎障害では血液透析を行うことにより、機能が低下している間、腎臓の代わりをすることが可能です。ただし、エチレングリコール中毒(車などに使用される不凍液など)の場合は不可逆的に腎臓の機能が破壊されるため、8時間以内に透析を行うことが必須になります。

慢性腎臓病の急性憎悪

<慢性腎臓病の急性憎悪>

 慢性腎臓病は、動物の場合には血液透析の適応にはなりませんが、慢性腎臓病で一時的に急激に悪化した場合は血液透析を行うことがあります。ただし、慢性腎臓病で失われた機能は元には戻らないため、ある一定以上には回復することはありません。

血液透析

カテーテルの装着

 まずは動物の血管にカテーテルを装着します。写真はカテーテルを設置した状態をレントゲン撮影したものです。
 動物の場合、肢の血管では細くて血液を取り出すことができないため、首の太い血管にカテーテルを装着します。

透析開始

 設置したカテーテルに血液透析の器械を接続し、血液透析を開始します。
 血液透析によって毒素を取り除きますが、一気に取り除くと体が急な変化に追いついていかないため、ゆっくりと透析を行います。
 重症度と経過によって、何日間か連続で透析を行います。

最後に

 血液透析を必要とする病気は、基本的に今までの点滴などの治療で反応しなかった場合は、何を行っても死んでしまうような病気になります。
 しかし、血液透析があればそのような病気でも助けることができます。
 ご不明な点がございましたら、いつでも当院までご相談ください。