フィラリア症の予防と治療

フィラリア症とは

 フィラリアは蚊によって伝播され、心臓内や血管内に寄生することで、咳や呼吸困難、運動不耐性、血尿などの様々な症状を示す病気です。
 この感染症は予防が重要で、現在では有効な予防薬が販売されており、用法通り服用することでしっかりとフィラリア症を予防することができます。

フィラリア症の感染の有無の検査

 フィラリア症予防薬を与えるにあたって、フィラリア症に感染していないことが前提になります。そのため、予防をしていないわんちゃんは投薬前に必ず検査を行います。
 フィラリア症の検査は、
抗原検査
ミクロフィラリア検査
エコー検査
この3つを組み合わせて行います。

1.抗原検査とミクロフィラリア検査

 はじめに血液を採取して、検査キットによる抗原検査と顕微鏡下でのミクロフィラリア検査を行います。抗原検査は虫体の数が少なかったり、抗原抗体複合体という物質が体内にできてしまっている場合は陰性となる場合があるため、ミクロフィラリア検査も必ず同時に行います。
 抗原検査で陰性でも、ミクロフィラリア検査で陽性の場合は「陽性」と判断します。

2.心臓の超音波検査

 次に咳などのフィラリア症を疑う症状がある場合や心雑音などの身体所見がある場合は、超音波検査を行います。
 この検査によって心臓内にフィラリアがいないかどうかの確認を確認します。この検査だけでフィラリア陰性という診断はできませんが、抗原検査やミクロフィラリア検査で陰性であっても、超音波検査でフィラリアが確認できれば陽性となります。

フィラリア症の予防

 フィラリア症の予防は毎月お薬を投与するか、1年間有効なお薬を注射するか(※1歳以上の成犬に限る)になります。
 お薬を与えるにはフィラリア症に感染していないことが大前提になります。そのため、フィラリア症の予防薬の投与間隔が開いている方はお薬を与える前にフィラリア症の感染の有無の検査を行います。

フィラリア症の検査を行わなくても投薬できる場合
・毎月しっかり予防を行っている場合。
・7カ月未満の子犬(保護犬等で生年月日がはっきりしない場合は検査を行います)。
投薬前にフィラリアの検査が必要な場合
・予防を行っていない、または間隔が空いてしまっている場合。
・飲み薬から注射に切り替える場合。

フィラリア症と診断された場合の検査

 フィラリア症に感染していると診断された場合、何か症状がある(咳や食欲不振、運動不耐性、呼吸困難など)一般身体検査で異常がある(心雑音があるなど)場合は、全身のスクリーニング検査を行います。
 これにより重症度を判定し、それぞれ異常に対する治療を行います。

血液検査
 貧血や溶血、肝臓、腎臓などの評価を行います。
レントゲン検査
 心臓の大きさや形、血管の走行、肺野の状態、肝臓の大きさなどの評価を行います。
超音波検査
 右心内や肺動脈内の虫体の有無、重症度の評価、腹水などの有無を確認します。

フィラリア症の治療

抗生物質の投与

 フィラリアはボルバキアという菌を保有しており、これらを減少させることにより、ミクロフィラリア血症を徐々に消失させ、また肝臓や腎臓への炎症を減少させるとも言われています。
 そのため最初の4週間は塩酸ドキシサイクリンという抗生物質を投与します。

フィラリア症予防薬の投与

 フィラリア症の予防で用いる薬は、ミクロフィラリアならびにL3、L4に作用するものですが、長期的に継続的に使用することで成虫にも効果を発揮する為、2週間間隔で投与を行います。

プレドニゾロンの投与

 フィラリア陽性犬は予防薬の投与によりアナフィラキシーを起こす可能性があるため、それらを低減するために初回にプレドニゾロンを投与します。また、プレドニゾロンは抗炎症作用も期待できます。

 治療開始から半年ごとに抗原検査とミクロフィラリア検査を行い、陰性と診断されるまで繰り返します。陰性となったら、通常のフィラリア症の予防に切り替えます。

フィラリアによって起きている併発疾患の治療

 全身の検査によって異常と診断された部分に対しての治療を行います。
 フィラリアは血管内、心臓内に寄生する寄生虫で、特に心臓の右心内に寄生します。そのため、いわゆる右心不全の症状を示し、咳や運動不耐性、肺炎、腹水貯留、浮腫などが見られます。これに対しては心臓の治療、利尿薬の投与、腹水の除去、抗炎症薬の投与などを行います。
 また、溶血を起こすこともあり、極度の貧血になることもあります。これには免疫が関係していることもあり、プレドニゾロンの投与や重篤な場合は輸血が必要になることもあります。

大静脈症候群

 大静脈症候群とはフィラリアに濃厚感染したわんちゃんにおいて、成虫が心臓の三尖弁の血流を部分的に阻害し、弁の閉鎖を妨げることで急に発症したものです。
 呼吸困難や血尿、元気消失、起立不可、虚脱、可視粘膜の蒼白などが見られ、多くが亡くなってしまうことが多い状態です。
 この状態の場合は鎮静下で右外側頚静脈からアリゲーター鉗子を用いて、外科的に虫体を摘出します。その後は点滴を行い、血液循環を維持します。ある程度落ち着いたら通常のフィラリア症の治療を開始します。

最後に

 フィラリア症はまだまだ多く見かける病気です。一度感染してしまうとフィラリアの成虫自体は治療で減らしていくことは可能ですが、傷ついた心臓や血管は元には戻らず、生涯治療が必要になり、かつ寿命もかなり短くなってしまいます。
 しかし、現在フィラリア症には予防薬が発売されており、この予防薬を正しく使用することで病気になることを防ぐことが可能です。病気にならないためにもご自宅のわんちゃん・ねこちゃんにフィラリア症の予防を行っていきましょう。

前の記事

猫の慢性腎臓病

次の記事

レーザー治療